AIパートナード学習教材

「高校数学I -- AIパートナード学習教材 --」のpdfファイルとPythonのコードです。Python開発環境にはJupyter Notebookを使いました.解凍したフォルダ内にあるjpynbファイルとpyファイルを同一フォルダに移して,jpynbファイルを立ち上げて実行してください.


以下は同シリーズの第1巻「高校数学I」の紹介文です。

生成AI時代の教育とは?

 生成AIの登場は,教育のあり方に劇的な変化をもたらしています.AIは,生徒の理解度や学習進度に応じて,個別にサポートやフィードバックをリアルタイムで提供できる強力なツールです.従来の一方向的な知識の伝達に頼らない,新しい教育の可能性が広がりつつある今,私たちはどのようにこの技術を学びに取り入れていくべきなのでしょうか?

 本書「ChatGPTで高校数学I --AIパートナード学習教材--」では,この問いに対するひとつの答えを提示します.特に,生成AIを活用した学習教材はどのように変化し,教師と生徒の関係がどのように変わるのかを,「高校数学I」を題材にして探っていきます.

本書の中心的な問い

 本書の中心的な問いは,「学習項目を列挙するだけで教材は成り立つのか?」というものです.従来の教材は,詳細な説明や解説が豊富に盛り込まれていることが一般的ですが,生成AIの力を借りれば,そうした詳細な部分が必ずしも必要でなくなるかもしれません.学習目標や学習項目が明確でさえあれば,AIが生徒のニーズに応じて解説や練習問題を生成し,リアルタイムで対応してくれる時代が来ているのです.

生徒の学習の進め方の変化

 生成AIの力を活用することで,生徒は自身の理解度や興味に合わせてAIと対話を行い,適切なフィードバックを得ながら学習を深めることができます.生成AIは無制限の質問環境を提供するため,生徒は疑問点があれば,いつでも,どこでも,何度でもAIに質問することができます.分からない点を徹底的に追求したり,興味の赴くままに探求を広げたりすることが可能です.また,AIに練習問題の作成を依頼することもでき,個々の学習ニーズに応じた問題に取り組むことができます.このように,AIをパートナーとする学習法は,生徒一人ひとりに最適な学習体験を提供し,より深い理解を促します.その結果,学習の進め方自体が根本的に変化することが期待されます.

教師の役割はどうなるのか?

 生成AIの進化によって,教師の役割も大きく変わろうとしています.従来,教師は知識の伝達者として,生徒に対して一方向的に教える役割を果たしてきました.しかし,生成AIが知識提供の多くを担える時代において,教師はもはや単なる知識の伝達者ではありません.代わりに,教師は生徒の学習のガイド役として,彼らの学習過程を見守り,AIでは補えないメンタリングやサポートを提供する存在へとシフトします.

 具体的には,教師は学習の目標設定や全体的な進行を管理しつつ,AIが提供するデータやフィードバックをもとに,必要に応じて生徒にアドバイスを行います.また,学習における困難な状況や感情的なサポートも重要な役割となるでしょう.教師は,生成AIと共存しながら,より深く,より個別化された学びの支援を行う教育の「ナビゲーター」としての役割を担います.

 生成AIは,教育に新しい形をもたらしつつあります.本書は,この技術を取り入れたアクティブな学習教材のひな形を,高校数学という具体例を通して示します.AIと共に学び,教師が生徒をガイドする未来の教育は,単なる知識の獲得にとどまらず,探究心を刺激し,自律的な学びを可能にするものです.私たちは,今まさにAIと共に学ぶ時代の入り口に立っています.この本を通じて,皆さんがその未来の教育の可能性を実感し,体験する一助となれば幸いです.

 本書の第1章では,「AIパートナード学習(AI Partnered Learning)」とはどのような学習法であるかを示し,近未来の教室の風景を予想して,そのメリットと課題を示します.第2章以降では,高校数学Iの「数と式」「2次関数」「図形と計量」を取りあげて,筆者が仮想的に生徒となってChatGPT 4oに質問を投げかけた対話ログを示します.この試みを通じて,ChatGPT 4oが高校数学の学習項目に対して,ほぼ的確な回答を提供できることを例示し,AIパートナード学習の可能性を示します.

 質問は下記までご遠慮なく.
 古橋 武
 名古屋大学名誉教授(令和2年4月より)
 Email: furuhashi.takeshi*
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