本稿は日本知能情報ファジィ学会東海支部主催の東海ファジィ研究会(令和2年2月16日開催)での招待講演および名古屋大学での最終講義(令和2年3月14日開催)の内容を加筆修正したものです.多くの方に読んでいただけたらと思い,公開します.ご意見・ご質問を歓迎いたします.
本稿では「座学・実験一体型講義」を提案しています.本稿では,学生一人一人が計測器と実験キットを保有し,座学の直後に実験を行う講義形態を座学・実験一体型講義と呼びます.多くの大学で電気電子系の学生実験は2年生後期もしくは3年生から開講されます.学部前半は座学中心であり,この間,学生には回路を触る機会がほとんどありません.座学・実験一体型講義では,最初の専門系科目の講義から,座学の直後に実験を行います.
ボードコンピュータの普及により,子供達は幼少期から,コンピュータで電子回路を動かして遊ぶことが簡単にできるようになりました.さらに,小・中・高校のプログラミング教育の必修化により,近い将来,大学に入学する学生の多くが電子回路の面白さを知っている時代が来ると,私は予想します.そのような学生に,回路に触らない電気電子工学の講義を2年近くも受けさせる形態はふさわしくありません.コンピュータを活用して電子回路を動かしながら法則・理論を学べる座学・実験一体型講義は,学生の興味を強く喚起することでしょう.座学の直後に具体例に触れることで,学生は法則・理論を理解し易くなります.
電子機器の発達により,手のひらサイズで1万円台のUSB計測器の性能が飛躍的に向上しました.このUSB計測器をノートパソコンにつなぐことで,電気電子情報系基礎科目の実験が可能となります.ブレッドボードを活用すれば,座学と同じ席で学生一人一人が実験できます.学生にノートパソコンを必携としている学科であれば,座学・実験一体型講義が実現可能です.
本稿の1章と4章で,筆者の考える座学・実験一体型講義を述べています.是非,ご一読下さい.
2020年3月
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古橋 武
工学博士
名古屋大学名誉教授
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